01.
ラボグロウンダイヤモンドとは
科学的、光学的、物理的には天然ダイヤモンドと全く一緒で、人工的な環境(ラボ=研究所)で合成されたダイヤモンドのことを指します。
ラボグロウンダイヤモンドは、科学者や技術者が高温高圧などの条件を制御し、ダイヤモンド結晶の成長を促進させる事によって合成されます。
02.
ラボグロウンダイヤモンドは偽物??
ラボグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンドと同じ特性を持った全く同じ鉱物です。
類似石であるモアッサナイト、キュービックジルコニア、ホワイトサファイアは以下の様に特性が異なります。
以上の事から、天然ダイヤモンドと比べラボグロウンダイヤモンドは鉱物として見た場合、同一の物質となりますが、商品として見た場合は区別(値段の違いの為)されています。
簡単に言うと
科学者に見せると同じ物
宝石商に見せると別な物
になるという事です。
03.
ラボグロウンダイヤモンドの歴史
ラボグロウンダイヤモンドの歴史は長く、最初の合成ダイヤモンドは1950年代に既に作られています。
しかしこれら初期の合成ダイヤモンドは、工業用(ダイヤモンドカッター)やレコードの針などで利用され、宝飾品としての商業利用は限定的でした。その理由は小さく黒色(宝飾品レベルは無色透明が高価)のダイヤモンドしか製造できなかったのです。
その後、製造技術の進歩によってダイヤモンド合成の品質とサイズが向上し、宝石市場において競合する存在として注目されるようになりました。この頃には合成カラーダイヤモンド(カラートリートメント)が誕生しました。
21世紀に入ると、ラボグロウンダイヤモンドの技術は大幅に進化し、天然ダイヤモンドと区別がつかないほどの高品質なダイヤモンドが合成されるようになりました。これにより、宝石業界では天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドの違いや評価基準について議論が起きるようになりました。
近年では30カラット以上のものが作られるようになり、コストダウンも含めクオリティーの高いラボグロウンダイヤモンドが作られています
04.
ダイヤモンドモンドの価値基準
ダイヤモンドの価値には『物質としての価値』と『情報としての価値』があります。
『物質としての価値』
・ダイヤモンドは4C(カラット、カラー、クラリティ、カット)と呼ばれる固有の鑑定基準により段階的に価格が決定している。
・鉱石として本物なのか?ここでいうのは他鉱石と区別する部分で、これに関しては鑑別書(宝石全てで取得可能)でダイヤモンドだという証明が出来ます。※天然とラボの違いではありません、その違いはまだ定義されていません。
『情報としての価値』
・ 一般的に天然ダイヤモンドは埋蔵量と掘削量の関係で希少性があり、それが担保となり資産価値が付く。
ラボグロウンダイヤモンドは人工的に生成される為、現段階で希少性という価値は付けられていない。
ただし現段階での商品としての品質を生成する精度は30%程度となっています。
・ 天然ダイヤモンドが大規模な露天掘りで起こす環境破壊や人権問題(児童労働、搾取)、ブラッドダイヤモンド(紛争・武装資金)など人道的懸念などが存在する。
一方、ラボグロウンダイヤモンドは工場(ラボ)で生成される為、小規模かつ省エネルギーのマイニングフリーのダイヤモンドの為、ダイヤモンドを取り巻く様々な問題をクリアしたクリーンなダイヤモンドとされています。(天然ダイヤモンドにも生産過程を監視する取り組みはありますが、情報の透明性は不足している)
05.
ダイヤモンドの資産価値とは?
ダイヤモンドの販売に関する広告ではしばしば「資産価値」が強調されますが、真の資産価値を持つダイヤモンドは、サザビーズ、クリスティーズ、フィリップスなどのオークションハウスで取り扱われる最高級のもので、その基準は最低でも1ct以上、F以上、VVS以上、EX以上のグレードであり、色(ブルー、オレンジ、レッド、ピンクなど)が特徴的で、何よりも唯一無二の存在であることが求められます。
一方、一般的なジュエリーショップで見かけるようなダイヤモンドには、資産としての価値は認められていません。実際に、市場で一般的に流通しているジュエリーを買取店で売却しようとすると、購入金額の10分の1から数10分の1にまで下がります。
これに対して、金やプラチナなどの地金は金融商品として証券会社で取引されており、資産価値が認められているため、購入時よりも価値が上昇していることもあります。
ダイヤモンドも宝飾品としての市場価格は存在し、世界中で取引されていますが、金融商品としての資産価値は認められていないため、購入時よりも売却価格が高くなることはありません。金とダイヤモンドの両方とも、埋蔵量に限りがあり、希少性があるとされていますが、金はその裏付けがあるために金融商品として成立しています。
一方、ダイヤモンドの希少性を裏付ける埋蔵量などのデータは限定的であり(世界のダイヤモンド流通を1社が独占していることが大きな要因)、ダイヤモンドの価値を担保するものが存在しないと評価されているかもしれません。
以上の事実から、ダイヤモンドには資産価値というよりも商品価値があると言えます。
06.
ラボグロウンダイヤモンドが選ばれる理由
天然ダイヤモンドと比較した場合、価格や品質の面で消費者に選ばれやすいラボグロウンダイヤモンドは、その製造過程が環境破壊や人権侵害(児童労働)、ブラッドダイヤモンド(紛争資金)などの問題を解消するクリーンなダイヤモンドとして認識されています。これにより、特に若年層や富裕層を中心に、「高額な費用をかけて天然ダイヤモンドを選ぶ必要はなく、むしろ意図的にラボグロウンダイヤモンドを選ぶ」というエシカル(倫理的)な消費行動が促進されています。
ラボグロウンダイヤモンドの先進国であるアメリカや中国では、小売店では天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドが同等に取り扱われ、消費者が自由に選択できる状況が整っています。
持続可能な発展、環境保護、社会的責任などの観点から、最近ではファッション業界でもイタリアの高級ブランド「アルマーニ」が毛皮の使用を停止すると発表し、注目を集めました。「ファッションのために動物の命を奪うことは間違いだ」という考え方が背景にあります。もちろん、着用感を比較するとフェイクファーは劣るかもしれませんが、それは一面的な事実に過ぎません。見た目はほぼ区別がつかず、フェイクファーの製造技術も進化し、肌触りが劣らない商品も存在します。
このような考え方はダイヤモンド市場(特に消費者)でも見られます。世界的に権威のある宝石鑑定機関でしか区別がつかない程度(ここでは品質の良し悪しではなく、ダイヤモンドが成長する際のパターンの違いなど)に拘ることで、環境破壊、児童労働の搾取、ブラッドダイヤモンド(紛争を支援する資金)のリスクを許容する可能性のある天然ダイヤモンドよりも、科学的に同じ物質でありながら高品質で低価格なエシカル消費を選択することは、自然な選択と言えるかもしれません。